都市工学科紹介

都市工学科の学習課程

カリキュラムの特色

本学科は、都市環境工学コースと都市計画コースで構成されている。

両コースともに、国土や地方圏、都市全体、都市を構成する地区、さらには各種都市施設などを対象とした調査・分析、計画立案、設計・実現の各局面において能力を発揮できるような専門家を養成することを目的としている。このような学科の性格から、当学科のカリキュラムは午後の多くの時間(3年の夏と冬、4年の夏学期の各9時間)をさいて、演習と実験に当てている。

当学科は学生諸君が、これらの時間を有意義に用いることを通じて、単に与えられた課題を解くのではなく、自らの観点から都市を眺め、課題を発見し、これに対処する能力を開発することを期待している。

演習と実験 (都市工学演習A 都市工学設計製図 都市工学演習B 環境計画基礎演習 環境工学実験演習)

都市計画コース

都市計画コースの演習は,駒場4学期から4年夏学期まで一貫したカリキュラムとして組み立てられている。いうまでもなく、都市の状況と課題は時代とともに変化する。かつての成長期においては爆発的な都市拡大の制御と環境汚染への対処が中心的な課題であったが、今日では、少子・高齢社会を迎えながら求心力を失い拡散しつつ衰退する都市・農村空間の再生・再編成、持続可能な生活の質の探求、先端的技術や土着的技術の活用・深化、などが課題となっている。そうした状況と課題の変化を反映しながら、最近の演習課題の進行は次のようになっている。

  1. 都市の形成過程や都市構成の捉え方・示し方を学ぶ
  2. 都市を構成するさまざまな地区の実態を体感・認知・分析し、その特性を把握・表現する
  3. 建築物や諸施設、公共的空間の複合体である都市的空間を、その比較的単純な開発形態である地区開発プロジェクトとして計画・設計する (以上3年夏学期)
  4. 現実の都市を対象に、実態分析から課題の把握・計画立案に至る都市基本計画策定の基礎的プロセスを習得し、あわせて計画制度上の諸問題を考察する (3年冬学期)
  5. 物的な計画だけでは対処の困難な中心市街地を対象に、戦略的な再生計画と効果の高い投入施策を立案する
  6. 各教官の研究する先端的課題に応じて提示される選択的課題に取り組む (以上4年夏学期)

演習を通じて、データ処理やプレゼンテーションのみならず、GISやCAD、2D-3D画像処理など、コンピュータを活用する技術を習得していく。一方、手描きのスケッチや建築的ドローイング、グラフィックな地図表現など、ある種のセンスとスキルも習得していく。幅・奥行・高さ・面積・密度などの寸法・指標と実体的空間の対応についての基本的感覚(スケール感)の体得も重要である。また、短時間に構想をまとめ相手に伝える表現能力を習得するための即日設計なども随時演習の課題として加わる。

都市環境工学コース

都市環境工学とは、我々の社会生活および生産活動の場全てを対象として、安全かつ快適な生活環境を次世代にわたって創造していくことを目指す学問である。環境工学者には、ゆるぎない専門知識と、現状の問題を的確に把握する能力、および、その問題を第三者に的確に伝え、具体的な解決策をわかりやすく提示する能力が求められる。これらの要件を満たす人材を教育すべく、本コースでは以下の通り演習および実験を行っている。

  1. 都市における環境問題の論点を整理・構造化するとともに、特定の都市におけるエネルギー消費および環境負荷を定量的に把握・予測する。(2年冬学期)
  2. 演習課題「流域における水循環・水環境のモデル解析」を通じて、数理モデルによる環境解析と環境汚染の定量的な扱い方を学ぶ。
  3. 基本的な水質項目(有機物指標、栄養塩類、微生物など)の分析法を習得する。
  4. 「大気汚染物質の動態解析とリスク評価」を実験と演習を通じて学習する。演習で大気汚染の情報整理や数理モデル解析の理論を学ぶと同時に、実験で大気汚染物質を実環境中から測定し、演習と実験の相互のフィードバックを通じて深い知識の習得を目指す。(以上3年夏学期)
  5. 「流域環境解析」において、ある特定の河川について既存情報を整理し、さらに実際に当該河川に出向いて水質調査を行い、水質汚染の原因とその改善施策を立案する。
  6. 「生物学的水処理プロセスの施設設計・解析と数学モデル」では、下水処理場における生物学的水処理の基礎理論・施設設計を学ぶと同時に、実験によってそれらの処理法を体得し、さらに実験で得られた処理特性パラメーター値を理論にフィードバックして考察することで、理論と応用の関連付けや相互比較を試みる。
  7. 「物理化学的水処理と上水道計画」では、浄水場で実際に用いられている処理法の理論を学び、実験でその効果を確認し、それらの知見を踏まえて実在都市をモデルケースとして上水道施設を設計する。(以上、3年冬学期)
  8. 演習課題「都市環境システムのライフサイクル評価」において、LCAを用いて、都市における廃棄物処理・リサイクルシステムの環境負荷を定量的に評価する。(4年夏学期)

演習・実験を通じて、環境問題へのアプローチの理論と解析手法を習得しながら、実践的な問題解決能力を育む。また、情報収集の方法、データの整理、報告書作成、口頭発表の手法など、研究者やエンジニア、あるいはプランナーに必要とされる基本的な技術を習得する。

これまでに本コースの学生が行った演習課題の成果は、国内の学会で学生が主体的に発表したり、報告書としてまとめたものが関係自治体の施策の参考となるなど、すでに単なる学習ではなく実社会に役立つものとなっている。

見学 (都市工学の技術と倫理)

都市を学ぶものにとって、実際の都市や都市施設に触れることは重要である。この意味から当学科では、3年夏学期に「都市工学の技術と倫理」の講義名で実地見学と技術者倫理教育を提供している。実地見学のこれまでの例では、ゴミの埋立てと清掃施設、朝霞浄水場、東京湾港湾施設、有楽町線建設現場、多摩川上流下水処理と野火止用水の見学などを行った。また、夏休みには、学生相互あるいは教官と学生との親睦をかねて、1泊2日の見学旅行を行っており、好評を得ている。平成6年度以降の行先は、八景島・横須賀市、浜松市、筑波研究学園都市、長野オリンピック関連施設、アクアライン・東京湾岸開発などである。

卒業研究

本学科の4年冬学期のほとんどの時間は、卒業研究(卒業論文または卒業設計)の作成にあてられる。卒業論文・卒業設計の具体的テーマについては、各「研究室」の紹介欄を参照願うこととして、ここではテーマ設定のプロセスだけを述べておきたい。

卒業研究は、4月に各教官がテーマ例を掲示した上で、各研究室毎にテーマや手法の説明と教官・学生の親密な相談・議論の場が設けられる。学生は、連休前におよそのテーマと指導教官を決めて研究に着手し、さらに研究室毎の研究会や個別指導を通じてテーマを深めながら、研究に邁進し、翌年の2月までに卒業研究をまとめる。卒業研究の発表と質疑応答は、2月下旬にまる2日をかけ、全教官の出席のもとに行なわれる。

大学院

1966年に大学院修士課程(都市工学専攻)が、1968年には同博士課程(同)が開設され、これまでに約400名の修士課程修了者、約100名の博士課程修了者を世の中に送り出している。都市工学科卒業生と同じく幅広い分野で活躍しており、社会的ニーズはますます高まってきている。また、大学院の学生に占める留学生の割合が大きいのも都市工学専攻の特長である。