都市工学専攻では、社会とのつながりを重視して社会に貢献できる学術を大切にしていますが、同時に、学術分野での世界最高峰を目指しています。

都市計画

都市計画の分野では、人の暮らしをより豊かなものにするための方法や技術を研究、開発、提案、実践しています。特にアジアの各国との学術交流として、Asian Planning Schools Associationは1991年に都市工学科の呼びかけにより初めての会議がもたれ、その後、二年に一度、各国で国際シンポジウムを継続して開催してきています。

例1)都市計画と住宅

近代以降、住宅による都市づくりは世界中の重要な関心事であり続けています。田園都市を提案したエベネザー・ハワードらが20世紀初頭に設立したInternational Federatoin for Housing and Planning(国際住宅・都市計画連合)においても、日本からの重要な理事の一員として参加しています。

例2)現代の都市デザイン

社会をめぐる激動の中で、都市はどうあるのか?、世界の状況を報告しあい、議論をする必要があります。International Forum on Urbanismという組織では、幅広い関心を持つ、主にヨーロッパとアジアの国々から参加者が一同に会し、論客によるシンポジウムや研究発表を行っていますが、東京大学都市工学科はメンバー12校の一つです。

また、ユネスコの委嘱により、ネパールの世界遺産である釈迦の生誕地、ルンビニの保存マスタープラン策定の国際チームリーダーを都市工学科の教員が務め、イギリス、イタリア、カナダなど世界の専門家を束ねて、かつ地元ネパールの専門家と協力しながら保存計画案の策定を2010年より3カ年計画で行っています。

都市環境工学

都市環境工学では、水供給や下水道、河川、湖沼、沿岸、地下水や雨水管理など、都市に関わる水の研究は、得意分野の一つです。水分野において関連する様々な学術分野の成果を積極的に取り込んで、新たな研究分野を開拓してきています。International Water Association (IWA、国際水学会) において活発に活動しており、水質の分野では高い評価を得ています。IWA系列のWater ResearchやWater Science and Technologyという英文雑誌、Environmental Science and Technologyなどアメリカ化学会の雑誌などに、多くの研究成果を発表してきています。

例1)水と微生物

大気中の酸素など、微生物が環境に果たした影響は計り知れないものがありますが、従来の微生物学では、単離した細菌を調べるという方式であったため、環境微生物の研究は限られていました。しかし、1980年代以降の分子生物学の進展とともに、環境微生物を単離しなくても調べられるようになり、飛躍的に研究の幅が広がりました。1996年に採択されたCOE形成プログラム「複合微生物系の機能を利用した高度水処理技術の体系化とその評価」以来、都市工学専攻では、分子生物学の分野における研究成果を積極的に取り込むことに成功し、現在の研究成果につながっています。微生物を用いた水の浄化や、水中の病原微生物について特長を持った研究を展開してきており、Applied and Environmental Microbiologyなどアメリカ微生物学会の英文誌にも成果を発表していています。

例2)水と膜

膜処理の分野では、日本が製造技術や市場シェアで世界をリードしているろ過膜を利用した水処理に関する技術開発を積極的に進めてきています。水供給の分野では、原水水質に応じた最適な処理法の開発を目指し、新規吸着素材との組み合わせた浄水処理など、さまざまな研究を進めています。下水処理の分野では、浸漬型の膜を用いて生物処理と組み合わせる処理技術の開発に世界に先駆けて成功しました。現在は、膜を用いた最新技術を用いて、低エネルギーあるいはエネルギー自立型の水循環など、生活と水の観点により密着した膜技術の開発を進めています。